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ディーラーで購入できるピュアレーシングカー “BMW M2 CS Racing” キーマンたちが語る、その可能性と熱き想い[後編]

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国内最高峰のツーリングカーレース、スーパーGT選手権第4戦が開催されたツインリンクもてぎ。熱気あふれるサーキットのメインエントランス近くで1台のレーシングマシンが注目を浴びていた。

そこに展示されていたのは、BMWが発表したばかりのBMW M2 CS Racingだった。BMW M2 CS Racingとは、BMW M社とBMW Motorsportが共同開発したサーキット走行専用のピュアレーシングカー。展示されていたのは、5月の「富士SUPER TECH 24時間レース」で見事なレースデビューを飾ったBMW Team Studieのマシンだ。

今回は、もてぎサーキットを舞台に、BMW Team Studieの鈴木BOB康昭氏と、BMW GROUP JAPANの高橋昌志氏に、BMW M2 CS Racingへの想いについて話を伺った。

BMW公認レーシングチームBMW Team Studie

夏の日差しが照りつけるもてぎサーキット。スーパーGT選手権第4戦にBMW Team Studie × CSLで挑戦するのは、アジア唯一のBMW公認レーシングチームBMW Team Studieだ。
BMW M2 CS Racingを富士24時間耐久レースで走らせ、デビュー戦でクラス3位・総合12位のリザルトを獲得したのもBMW Team Studieである。そのBMW Team Studieを率いる鈴木BOB康昭氏に、BMW M2 CS Racingについて語っていただいた。

「2014年から、本国BMWモータースポーツ、BMW GROUP JAPAN、StudieでオフィシャルチームBMW Team Studieを結成して国内、海外のレース活動を続けています。今年からは次のステップの活動を始めるために現場でのチーム監督は任せて、その時間をBMW M Motorsportディーラーとなったモトーレン東都への協力や、BMW M2 CS Racing、市販車を含めたモータースポーツの裾野を広げる活動を進めています。」

BMW M2 CS Racingは Mにとって大きな意味がある

「大きな起点は2021年の4月1日に本国のBMWモータースポーツとMモデルを開発するBMW Mディビジョンが統合されたことにあると思います。これによって、BMWはモータースポーツとMブランドをより融合していくことになりました。
その1st.アクションが、日本でもBMW M2 CS Racingをディーラーで販売していくという試みだと思います。」

「BMW M2 CS RacingはBMW M4 GT4の下位カテゴリーになりますが、つくり方がかなり違います。いちばん違うのは、ブレーキです。レーシングカーは、踏む力をサポートするマスターバックが装着されていません。フルブレーキするには、100kgくらいの踏力が必要になります。これが一般のドライバーでは難しい。レーシングマシンに初めて乗ると、ストレート後の1コーナーでブレーキが効かなくて止まれないということがあります。これは踏力が足りないことが原因です。ところがBMW M2 CS Racingは市販車と同様にブレーキ倍力装置であるマスターバックがあるので、ものすごくラクにフルブレーキができます。市販のMモデルを乗られている方であれば違和感なく走らせることができる。パワステやシフトにもその考えは活かされているし、エアコンもついています。Mモデルのドライバーであればきっと乗れる、それが大きな違いですね。」

BMW M2 CS Racingについて、そしてMブランドやモータースポーツについて語り始めるにつれて、鈴木BOB康昭氏の熱量が上がっていくのが伝わってくる。

「BMW M2 CS Racingによって、完全に選択肢が増えたと思います。たとえば、BMW M4にかなりのお金や時間をかけてサーキット走行を楽しんでいたお客様がいたとして、次のステップとしてレーシングカーを勧めたくても、これまではBMW M4 GT4になってしまいます。それはとてもハードルが高くなります。ところが、今度はこの間を埋めるのに充分なクルマが登場してきました。それがBMW M2 CS Racingです。」

モータースポーツとしてステップアップができる

「BMW M2 CS Racingで走れる機会を順に言っていきますと、まずはプライベートで楽しめるスポーツ走行があります。その次に日本全国にみんなで楽しもうといういわゆる草レースがあります。そしてJAF公認のアマチュアが参加できるレース。その上には、盛り上がっているスーパー耐久レースが待っています。BMW M2 CS Racingはスポーツ走行から、本格的な耐久レースまで楽しめるクルマです。」

レースに合わせて性能調整ができるBMW M2 CS Racing

「各レースでは、オーガナイザーと協議してレギュレーションを合わせて走ることになります。たとえば、私が大好きな草レースの一つに、ETCCという欧州車だけで行うレースがあります。オーガナイザーに連絡すると、BMW M2 CS Racingは速すぎると言われました。だけど、BMW M2 CS Racingは9個のパワー・スティックを調整することでパワーをベース・バージョンの365PSから最大450PSまで変更できます。ですから、今は365PS仕様で交渉をさせていただいているところです。そのほかのレースについても、BMW M Motorsportディーラー モトーレン東都のスーパーバイザーをさせていただいているので、カテゴリーに合わせた性能調整についてはできるだけフォローしていくつもりです。」

BMW M2 CS Racingだけのワンメイクレースを実現させたい

鈴木BOB康昭氏の話をお聞きして、どうしても確認したいことがあった。それはワンメイクレース、BMW M2 CS Racing Cupの可能性についてだ。

「個人的ということになりますが、10台以上参加できれば、ぜひワンメイクレースを開催したい気持ちはあります。BMW M2 CS Racing Cupイタリアは13台の出走ですから。仮に10台まで届いていない場合など、今あるスーパー耐久の中でBMW M2 CS Racingクラスをつくっていただくことは可能かもしれません。そのほかにはMINIチャレンジカップとのタイアップということも可能でしょう。そこにそれぞれのディーラーさんがメカニックやドライバーを参加させて、さらにお客様を招待してみんなで盛り上げるような“BMW Mのお祭り”のようなことができるといいですね。」

「理想としては、年間6戦開催して、その中で1戦はBMW DRIVING EXPERIENCEと同時開催とかできれば最高です。レースに参加しないお客様も、実際にBMW DRIVING EXPERIENCEで体験してもらいたいですね。同乗するだけでもわかると思います。1cmステアリングを切るだけでカミソリのようなハンドリングを見せるMモデルですが、レーシングカーは1mmの動きで反応する感覚です。その違いを体感していただきたい。BMW M2 CS Racingによって、モータースポーツの最初の一歩のハードルは下がったので、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。」

レーシングカーを取り扱うためのトレーニング

BMW M2 CS RacingをBMWディーラーで扱うためには、まず取り扱うための技術的なトレーニングも必要だった。次に語っていただいたのは、プロジェクト発足当時、BMW GROUP JAPANテクニカル・クオリフィケーションマネージャーだった高橋昌志氏だ。

「昨年8月にBMW GROUP JAPAN でMブランドのマネージャーであるニグマンから連絡があって、“M2 CS Racingというカスタマーレーシングカーを国内で販売する。それにあたって、ディーラーのテクニシャン向けトレーニングを実施してほしい。”と依頼を受けました。最初は信じられない気持ちでした。もちろん、自分もレースが好きですから、これは自分がやるしかない。ぜひやらせて欲しいと即答しました。」

そこには、自らプライベーターとしてレースに携わってきた高橋氏だからこそ、強く感じる想いがあった。それは、BMW GROUP JAPAN全社を挙げてモータースポーツに関わる機会ができたということだ。「だからこそ自分が携わることは非常に光栄であり、楽しんでいきたい。」と語ってくれた。

また、BMW GROUP JAPANのみならず、ディーラーのテクニシャンにとっても、モチベーションアップに繋がる可能性があるという。「M2 CS Racingにはレース用専用デバイスも装着されていますが、エンジン、トランスミッション等の主要コンポーネントは彼らが普段整備している市販車と同じなので、レース好きのテクニシャンであれば対応できると思います。日本各地に販売されたM2 CS Racingのメンテナンスを各地のディーラーが担当するようになれば、ディーラー対抗戦のようになっておもしろいと思いませんか」と笑った。

BMW M2 CS Racingの高い安全性とコストパフォーマンス

さらにもうひとつ、高橋氏が強く感じたことは、レーシングカーとしてのM2 CS Racingの安全性の高さ、性能に対して非常にコストが優れているということだった。

「市販車を改造してサーキットを走ることが100パーセント安全かというと、そうでもない場合もあります。しかし、BMW M2 CS Racingは本当に安全だと言えます。
BMW M2 CS Racingはロールケージもしっかりとしていますし、ガスタイプの車載消化器まで備えています。そういった意味で、非常に安全にレースを楽しめるマシンが一般の市販車購入と同様にディーラー経由で手に入るということになります。」

BMW M2 CS Racingの安全性を説く姿は、さすがにレースを熟知している高橋氏のならではの視点であり説得力がある。そんな高橋氏に、BMW M2 CS Racingのカスタマー像について、聞いてみた。

「自分は2通りあると思います。1つは、参加型のレースに出場したいという方。友人や複数の方でシェアしてそのチームで耐久レースなどに参加すればきっと楽しめると思います。

もう1つは本気でレースをされている方。BMW M2 CS Racingは、富士24時間耐久レースでも証明したように公式練習でシェイクダウンして、ほぼノーマルの状態にもかかわらず、24時間ノントラブルで完走して総合12位と結果を出しています。ですから全日本クラスのレースに参加されている方の選択肢にもなると思います。もちろん、意気込みとしてはワンメイクレースはやりたいですね。BMW M2 CS Racingの販売台数は20台となっていますので、完売すればワンメイクレースも成り立ちますし、ぜひ、ディーラー対抗戦をやりたいですね。」

これからサーキット走行やレースを始めようと思われている方、モータースポーツとして楽しみたい方は、BMW M2 CS Racingを購入することが可能だ。ファンが増えることで、同乗体験やサーキット走行会、さらに独自のレース企画も動き出すかもしれない。ディーラーで買えるレーシングカー、BMW M2 CS Racingのこれからに期待していきたい。